SEIKO Sonola
セイコー ソノーラ
修理のいろいろ



子供の頃、自宅はおろか、友人宅、親戚宅、どこに行って もこの逆円錐型の振り子の時計があった、っていうくらい普及していたボンボン柱時計、それがこのセイコーソノーラ。
シンプルな作りで、注油さえすれば100年経っても動く、そんな名品が消えてゆくのは惜しい。
ってことで、修理やら作った小物やら紹介していきます。
SEIKO Sonola transistor striking clock has made the Japanese spring clock a thing of the past.
About 1970, the Sonola had become so popular that every home had it.
This is a repair memorandum to preserve this lovely striking clock.

・ソノーラについて
昭和30年代に発売され、ぜんまい式や錘式の時計にとってかわった、一世を風靡したと言っていい柱時計です。
パワーソースであるぜんまいや錘など、軸や歯車に力がかかるものがほぼなく、摩耗するのは時報を鳴らす撞木を駆動するカム軸だけという誠にシンプルで堅牢な ムーブメントを持っています。
棒リンを撞木で叩いて1時間おきに時報を鳴らす機構を持っています。
電池の交換を忘れて液漏れで壊さない限り、無整備で20年ほど動作するものが多かったようです。
ヤフオクやメルカリで、たまに新品の長期保管品が出てきますが、日付曜日表示機能がついているものは潤滑油が変質してまともに動作させられないものがあるの で、新品であっても分解整備が必要になるものが多くあります。
ソノーラの故障原因はこの潤滑油が変質して固着する、と電池の液漏れで電池ボックスがぼろぼろになる、振りベラが破損している、がメインです。
部品の固着により、時報を打つ回数を決定する数取り車周りのコイルゼンマイの末端固定が伸び切って変形し、外れてしまっている故障につながってる例も多いで す。
電池の液漏れは、茶色いのはマンガン電池、青緑のはアルカリ電池の液漏れです。
電池ボックスの端子が原型をとどめているものに関しては洗って磨いて接触不良を直すだけで大抵復活します。
振りベラ破損に関しては、錆び、落下ダメージ、振り子をねじってしまい破損、輸送時に振り子を固定せずに発送して破損などがありますが、ヤフオクなどで購入す る際に振り子の固定を発送者が知らない場合、輸送中に破損というパターンが結構多いようです。
振りベラ破損は、おもりの位置をいくら調整しても進んだり遅れたりが一定しない不安定さとなって表れます。
一部、時報が「キンコーン」と2音で鳴る機種に関しては、時報を鳴らす撞木の軸受けが激しく摩耗して楕円になり、動きを阻害してしまう現象が見受けられます。
これの修理は軸受けの打ち換えが必要になりますので修理には最低限ボール盤が必要です。



・代替トランジスタと抵抗値

まぁ滅多なことでソノーラのトランジスタを交換する羽目になることは少ないとは思いますが、一応データをあげておきます。
手持ちのソノーラをいくつか開けてみた感じ、時計の駆動部に使用されていたトランジスタと抵抗値は図のような感じです。
基本、トランジスタを飽和領域で使用し、Rcの抵抗値で振り子に与える電力を制限している感じですね。

さて、これらのオリジナルトランジスタはゲルマニウムトランジスタなので、何十年も前のデッドストック品を買うか、ロシア製のものを輸入するくらいしか代替品 を入手する手段がありません。
最近はシリコントランジスタもだいぶ絶版になってきましたが、ゲルマニウムトランジスタよりはまだ入手が安定していますので、DIY界隈ではシリコントランジスタ の代表格である 2SA1015で代替できないか実験してみました。

現状考えられることは、ゲルマニウムトランジスタのベースエミッタ間の電圧降下が0.2V程度なのに対して、シリコンは0.7V程度あり、コイルに振り子が通った 際の起電力パルスの有効幅がゲルマニウムのものより若干短くなります。
しかし、増幅率に関しては、2SA1015の方が数倍大きいので、Rbの値は若干大きくして消費電力を減らします。
Rcに関しては、小さくし過ぎれば消費電力が大きくなり、電池の持ちが悪く、また振り子を加速しすぎてコイルを叩いてしまいます。
大きくし過ぎると、電池の消耗や何かのはずみで振り子の振れ幅が小さくなった時に、振り子の加速が足りなくて止まってしまいます。
振り子の振り幅が小さくなるということは、コイルに入る磁石の長さも入り込むときの速度も振幅の頂点付近だけで遅くなるため、トランジスタを駆動するパルスも小さ くなるということであり、振り子の消費される運動エネルギーを補える電力量を提供でき なければ、振り幅はだんだん小さくなり止まります。
抵抗値を変え、若干弱い振り幅からでもリカバリーできる抵抗値を探していきます。

実験の結果、使用した2SA1015-GR(増幅率hfe280:実測)では
Rb:1000Ω
Rc:4700~5100Ω
で安定しました。

Rbはもう少し上げられるかもしれませんが、計算上の飽和電流ギリギリだと振り幅が小さいところからのリカバリーがなされず止まってしまうので、このような抵抗値 に落ち着きました。
Rcに関しては、オシロスコープで見た感じだとパルス幅が減った分を電流値を増やしてカバーしているのですが、これ以下の抵抗値だと加速が強すぎて振り子の振り幅 が大きくなりすぎ、コイルを叩きま す。
2SA1015の個体差によっては若干の調整が必要かもしれません。
電池を入れ、しばらく振り子を振らせてコイルが振り子を叩き始めたら抵抗値をもっと増やしたものに交換、ちょっとしたことですぐ止まってしまうようなら減らす方向 で調整してください。

デジタル信号と異なり、振り子の磁石とコイルによって作り出されるパルスはM型の二子山で、ゲルマニウムからシリコンにトランジスタを変えるとパルス長も振幅も変 わるので、増幅率からこんなもんかな?と割り出した計算値から、実際に交換して動かしてみた結果は、予想とは大きく違うものでした。
2SA1015に換えてみての欠点ですが、やはり振り子の振り幅が小さくなるとゲルマニウムトランジスタと比較して止まりやすいですね。
振り子を止めた状態から再起動する場合にも、最初大きく振り子を振ってやらないとしばらくすると止まってしまう場合があります。
振り幅が小さい時の起電力では、シリコントランジスタの電圧降下に食われてしまい、十分な磁力を発生させる電力供給ができないのでしょう。
とはいえ、代替品として使えそうなことはわかりました。
PNPトランジスタなら他の型番も使えるとは思いますが、シリコントランジスタの場合あまり増幅率が低すぎるものは振り子の止まりやすさが増す可能性があります。
ebayなどに、ゲルマニウムトランジスタは大量出品されているので、多少お金をかけてもよいならそちらの方が抵抗値を大きく変えることなくオリジナルに近い状態 に調整できると思います。
ゲルマニウムトランジスタ同士でしたら増幅率とRbの値がほぼ比例関係にあるので、それを目安に抵抗を変えてみるといいでしょう。

クロスリファレンスサーチでは置き換え可能なゲルマニウムトランジスタとして以下のトランジスタが性能的に近いものとして出てきます。
2SB75   hfe  ??(  45- 55):2SB54 2SB75A 2SB77 2SB135 2SB186 2SB408 ASY48VI ASY70VI ASY90-2 SFT335 MP21 MP25
2SB175 hfe100( 55-360):2SB56 2SB135 2SB303 2SB324 2SB619 AC126 AC138 AC139-7 AC142-7 GET102 HEPG0008 MP20 MP21
2SB219 hfe  31( 19-  42):2SB22 2SA386 2SB220A 2SB224 2SB381 2SB495 2CY17 2CY18 2G1026 2G1027 2G525 2G526 2G527 2G577 2N1371 2N1375 2N1924 2N2375 2N2376 2N2659 2N2660 2N2661 2N381 2N382 2N524 2N597 SFT241 SFT244 SFT245 STC5080 T2392 MP16 MP20 MP21 MP25 MP26
これらはテストしたわけではないので、交換しただけで動くかどうかはわかりません。
交換を試す際には自己責任でお試しください。

電気周り解説ついでに。
初期のソノーラにはラグ基板にオレンジ色の円筒状のコンデンサと抵抗が直列に配置されているものがあります。
これはモーターや接点のノイズを吸収するためのもので、当時の液漏れしやすい乾電池の保護の為につけられたのではないかと推測します。
年式が進んだソノーラでは省略されています。
断線状態でこの部分が故障していたとしても、動作には支障ありませんし、外してしまっても問題は起こりません。


・時報停止アダプタ

昭 和の頃は数世代が一つの家に住み、柱時計も夜昼構わずゴンゴンなっていても誰も気にしなかったのですがストレスの多い現代社会、寝てる間1時間おきに時報が鳴り響 くのはやかましいでしょう、ということで作ったソノーラ専用時報停止アダプタです。
時報用電池と入れ替えて使います。
クォーツ時計を搭載しており、休眠時間(時報が鳴らない時間)を設定して時報を停止します。
設定可能な休眠時間は1時間刻みの6-13時間です。
設定変更にはハンダづけが必要です。(写真の1,2,3部分を基板GNDとショートさせて設定します。)
設定された時間帯は、時報が鳴る時間になってもモーターに電力を供給しません。
実際の使用法は、アダプターのクォーツ時計動作用のコイン電池を入れた時点からクォーツ時計が動き出し、設定された時間モーターへの電力供給を遮断します。
モーターへの電力供給源はアダプタに入れる単三電池2本です。
休眠時間9時間に設定して、夜の23:30にコイン電池を入れると、9時間後の翌朝8:30に電力供給が再開するので、9時から時報が鳴り始めます。
そして、夜の23時の時報がその日最後の時報となります。
残念ながら朝一発目の時報(上記例の場合9時)が12回鳴ってしまう問題がありますが、これはソノーラ本体の時報機構の仕様なのでどうにもできません。
私は、休眠時間を13時間に設定して、夜の22:30にコイン電池を入れ、夜の22時の時報を最後に、翌日の昼の12時に時報を打ち始めるようにして使ってい ます。 クォーツ時計のコイン電池は9~12か月、時報を鳴らすためのアルカリ単三電池は2年以上持ちます。
タイマーに使っているPICをより省電力型のものに変更するとコイン電池が1年以上余裕で持つようになるはずですが、部品だけ入手してまだ交換していません。

自宅と友人宅で稼働中です。

SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 時報停止アダプタ




・振りベラ再生
ソ ノーラの時計の精度を決める重要部品振りベラです。
これが破損して板バネ部分に折れや曲がり、酷い錆などが出ていると、振り子の周期が一定ではなくなり、どんなに錘で調整しても遅れたり進んだりでまともに動か なくなります。
今でもヤフオクなどで売っていますが、中古の振りベラを再生する方法があります。
振りベラは4本の金属ピンを潰して固定されているので、それをセンタポンチや腕時計のピン押しなどで押し出して外すと分解できます。
サンドイッチされている破損してしまったバネとして働く薄い金属板を、写真右の2本の金属板で置き換えてやることで再生します。
交換に使う金属板は、フィラーテープと言う炭素鋼でできた使い捨ての隙間測定ゲージで、ダイヤモンドカッターでオリジナルと同じ厚さのものを、同じ幅に切って 使用し ます。
エッジ部分にバリがあるとダメなので手を切らないように紙やすりなどでバリを全部取ります。
上下のベースプレートを寸分の狂いもなく合わせこむための治具を作り、瞬間接着剤を塗って万力で締めて厚みが増えないよう接着します。
ズレると固定用のピンが引っかかって固定できません。かなりシビアです。
写真の治具は、CEM-3生基板をフライス盤で削って作ったもので、バラバラにした振りベラを接着剤を塗ってはめ込むと万力で締め詰めるためのわずかな出っ張 りができるものです。
硬化後接着剤が少しはみ出てても素材が基板なのでたわませて引っぺがせます。
また、接着時に変な力が金属板にかかって歪んだまま接着されると失敗です。
現状、再生した振りベラは正常に稼働しています。
ちなみに、振りベラを本体と振り子に固定する黒色のピンですが、1.1->1.2mmくらいのテーパーピンですので、探してもまず見つかりません。
特に振り子側は前後の動きを左右してしまうので、私は1.1mmのステンレスピンにペイントマーカーや粘度の高く浸透性のない接着剤を極少量外周部に「置い て」抜け止めにして使っています。

SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 振りベラ分解図  



・文字盤(Clock Face)
半世紀も過ぎたソノーラの文字盤は触るだけで剥げていくものがあります。


左上の酷い状態の文字盤は、ヤフオクで部品取りに購入したソノーラです。
ここまで酷いものはそう見かけない、というか、ここまで剥げたものは廃棄されてしまうことが多いので・・・
右上のものは、そこまでひどくはないものの、剥げが始まっており、洗ったりしようものならあっという間に悪化する状態です。
タバコのヤニが酷いからと、マジックリンなどアルカリ性の洗剤をかけると剥げが始まっている塗膜は簡単にボロボロにヒビが入って剥げます。


下に公開している文字盤のデー タは、まともなものを写真 に撮って、シールにできるよう整形しなおしたものです。
インクジェットプリンタでシール用紙に印刷し、表面にラッカーを吹いて、塗膜剥離剤で古い文字盤を剥がしたところに貼り付けて使います。
文字盤の塗膜をきれいに剥がすには、DIYセンターなどで売っている塗膜剥離剤を使うとアルミ表面に傷をつけずきれいに剥がせます。
塗膜剥離剤は大抵強力なアルカリ成分を含むので、皮膚につけると激痛が走り、表面が溶かされて化学やけどを負います。
皮膚につけない、目に絶対に入らないよう気を付けて扱ってください。
落ちにくい部分は、ブラシや樹脂のスクレーパー、お金をかけたくないなら使わなくなった樹脂の会員カード等のエッジでこすって落とします。

シールは円形にキレイにカットできればまじまじと見ない限り、貼り替えてあると気づかれることはまずありません。
左が、実際に文字盤の塗膜をすべて剥離して、印刷したシールを貼ったものです。
パッと見、わからないでしょう?
蓄光シールに印刷すると夜間しばらくの間光って見えるものが作れたりします。
このデータだけは、文字盤損傷でソノーラを捨ててしまう要因になるので公開します。
平面文字盤専用ですので数字にエンボス加工がある文字盤、プラの立体文字がついている文字盤には使えません。
600dpiで印刷して利用してください。
販売目的での修理に使うのは禁止します。
Do not use these clock face prints for commercial purposes.
Please promise that you will only use them for DIY purposes and repairing your beloved sonola.
I wish that these data will save many sonoras that are destined to be discarded.



seiko_sonola_clock_face.zip
SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 文字盤1SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 文字盤2


・電池ボックス
ぎりぎり手持ちの3Dプリンタで作れそうだったので3Dデータに起こしてみました。
これも壊れてソノーラの廃棄要因になってしまうので3Dデータを公開します。
元になっている電池ボックスは昭和40年代のST-432、カレンダー無しの中期型?に当たるモデルです。
が、作ってみたら後期型の電池ボックスそっくりになりました。
初期型の電池ボックスに関しては、電池ボックスの天板が剥がれた個体を入手したら作るかもしれません。
オリジナルは電池ボックス内に電池のがたつきを押さえる出っ張りが中央にありますが、この部分は後期型の電池ボックスにならい省略しています。
電池ボックスのプラス電極となる鉄板製の天板及び蓋を移植してご利用ください。
天板の固定は、オリジナルは樹脂の溶着ですが、これは溶着部分が皿穴になっています。
天板を取り付け位置に固定したら、天板の上に軽く盛るようにパテか2液式のエポキシを置き、爪楊枝などで皿穴の中に押し込んでください。
天板の上の盛ったパテやエポキシは薄すぎると割れてすっぽ抜けるので0.5~1mm厚くらいを目安に厚みを持たせてください。
下方からパテやエポキシが出てきたら、皿穴を埋めるように整形して硬化を待ってください。
硬化するとアンカーのようになるので十分電池を入れられる強度が出ます。
強度が心配な方は天板とケースの境目をぐるっと覆うようにパテやエポキシを盛るか、天板とケースの接触面に適当な接着剤をベタ塗りしてから作業してください。
基板取り付け用のネジ穴4か所は、現行JIS規格のM3ナットがすっぽりはまるようにしてあります。
基板・マイナス電極固定は現行のM3ネジに交換してください。
一般的なレジンで制作した場合、樹脂は硬くて脆いので、ねじの締めすぎで割らないようお気を付けください。
写真はサポート切り離し後、サポートのバリを軽くやすりがけしてナットを埋め込んだものです。

SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 電池ケース1SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 電池ケース2SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 電池ケース3

なお、サポートの数がアレなことになっているので、切り離しは結構面倒くさいです。
ケース底面が広いのに傾きを付けずにサポートをやたら狭く配置しているのは傾けられないほど出力可能範囲ぎりぎり だからです。
サポート無しのデータが欲しい方は掲示板に要望が出るようなら掲載します。
SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 電池ケース サポート

警告 :これら本ページ 記載の 3D データを利用して発生した全ての事象について、全ての責任はデータの利用者が負うものとします。
   また、このデータを利用しての販売目的でのソノーラの修理への利用、および出力物・3Dデータそのものの販売・無許可での転載・頒布を禁じます。
   あくまで個人が、手持ちの愛機の修理のみに利用することを御誓約の上、ご利用ください。

Warning: You must accept liability for damages of any kind resulting from using the 3D data on this page.
     These 3D data may not be distributed without my permission.
     Do not use the objects output from these 3D data for commercial purposes.
     Please promise that you will only use them for DIY purposes and repairing your beloved sonolas.
     If you fail to keep these promises, you will be cursed.

Download:光造形3Dプリンタ用ソノーラ電池 ボックスstlファイル

注:サポートはstlファイルに含まれていますのでそのままスライスソフトにかけて出力してください。
底面が酷く凸凹になる場合は、液温が低すぎるか露光時間不足です。

・銘板シール
これまた、剥げてなくなるか、電池の液漏れで汚れて酷いことになっているか、劣化で色が抜けて読めなくなっていることが多い裏面の銘板シールです。
さすがにフォントまですべてそっくりにすることはできなかったので、できるだけ似たフォントで構成してあります。
色味は脱色の具合から純粋な赤、CMYのMY100%同士の混色としました。
オリジナルを作った人は結構適当に作ったらしく、文字間隔がばらばらだったり中心から大きくずれてたりと修正したくなってうずうずする箇所がいくつもありまし たが、おかしなまま再現してあります。
スタンプによるシリアル番号や検印は再現の対象外です。
ここの写真はいろいろ細かい修正前のものが混じっているので参考程度で。
SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 銘板1

SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 銘板2SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 銘板3

SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 銘板4SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 銘板5


・時計内カレンダー機構取説シール
時計の中の底板に貼ってあるカレンダー機構の取説シールです。
これまた、注油した油が染みこんだり、日焼けして消えて読めなくなっていたり、電池の液漏れで汚れていたりとまともなものは少ないです。
これもフォントは似た物を使っていますがオリジナルそっくりにはなっていません。
色味は紺色だとは思うのですが、手元のオリジナルの脱色が激しくてこんな色だったろう、という想像で調色しています。
SEIKO Sonola セイコー ソノーラ カレンダー取説1

SEIKO Sonola セイコー ソノーラ カレンダー取説2


・電池説明紙片
SEIKO Sonola セイコー ソノーラ 電池ケース内案内電池 ケース内に入っている電池がどちらが運針でどちらが時報 用なのかを案内する紙片です。
赤いナショナルハイトップ、懐かしいですね。
ちなみに、当時の赤電池では運針1年ですが、2021年現在今売っている黒マンガン電池は100均の電池ですら余裕で2年ソノーラを動かせます。
ソノーラの運針用電池にアルカリ電池使うと、最新の液漏れ防止型の電池でも液漏れしますので、マンガン電池を使いましょう。
アルカリ電池は何年もかけて電池を使い切るような微弱電流用途には向いていません。




・時報接点部樹脂ワッシャー複製法
意外と重要な時報接点部の透明樹脂ワッシャーの複製法です。
ていうか、これはモデラーの知識ですね。
100円ショップのダイソーなどで湯で柔らかくなる樹脂粘土と、UVレジン液を購入してください。
湯で柔らかくした粘土に樹脂ワッシャーを小さい径の方を粘土側にして、平面の出ている硬いもので押し付けて型を取ります。
その型に、レジン液を流し込んで日光など紫外線に当てて硬化させ、型から外してバリ取りと厚さ合わせで研磨して完成です。
3Dプリンタでも作ってみましたが、ものが薄く小さすぎて変形が起こることが多く、歩留まりが悪いので公開は見合わせます。
外径6mm厚0.65mm 内径5mm厚0.55mm 穴径2.6mm ワッシャ総厚1.2mm
(内径部厚さが0.6mmを超えるとブレーキ接点のプレートが固定できなくなります。)
絶縁ワッシャ 型取り


・修理の要
以下の文章はソノーラの修理で私が得た知見をもとに書かれています。
が、間違いがあるやもしれません。
鵜呑みにせず、自分の知識と経験と照らし合わせて参考程度にご覧ください。
この通りに実行したとして、発生した事象の一切に私は責任を負いませんので、行動は自己責任でお願いしますね。
なお、このコーナーに使える写真は今手元にないので文章だけです。
作業中手が油だらけになるものが多いのでデジカメ触らないってのもありますが。
撮れる機会があったら撮って掲載します。

注意:ソノーラに使われている樹脂部品は、かなり経年劣化が進んでいます。
ムーブメント、振り子などの手入れを行う際は、紫外線、直射日光に当てないよう注意 してください。
一気に劣化が進んでヒビが入ったり割れたりする危険性があります。


・基礎

ソノーラの長針は、時計回りにしか回してはいけません。
反対方向に回すと、ガンギで回転が止められるので無理な力が歯車にかかります。
一応クラッチがついているので、破損する前にクラッチが滑って力を逃がしますが、このクラッチが経年劣化で固着していると致命的な破損を引き起こす可能性があ ります。

上の写真は、ソノーラを外して持ち運ぶときの振り子を固定ねじで固定した状態です。
固定ねじを上まで一杯に上げ、振り子を動かないように固定します。
締めすぎに注意してください。
がたつきがなくなる程度でOKです。
ソノーラを稼働させるときは固定ねじをいっぱいに下まで下げて振り子をフリーにしてください。


ソノーラは、動作時の傾きにものすごく敏感です。
歩度調整(遅れや進みの調整)をするときに、前後左右の傾きが少しでも変わると歩度が変化します。
ガチガチに時計を壁に固定するか、傾きを一定に固定できる台座を作ってから歩度調整を行わないと、時計本体に触るたびに歩度が狂って進んだ遅れたと騒ぐ羽目 になります。
ソノーラの設置では、奥行き方向の傾きは振り子の下にある2つの垂直出しネジで、振り子が振れたときに左右の太鼓(コイル)の中をこすらないようなるべく真ん 中を通るように、
左右の傾きは振り子を振らずに静止させたときに振り子の先端が固定ねじの先端と合うよ位置で、固定金具をネジや釘で固定します。
多少ずれていてもかまいませんが、歩度調整(遅れや進みの調整)は、必ず同じ傾き、同じ状態に固定されたままで行ってください。
少しでも傾きが変わると調整と逆の方向に結果が出たり、まともな調整ができませんのでご注意を。

また、気温が大きく変化する季節の変わり目や、住んでいる場所が昼夜で寒暖の差が激しい地域の場合、振り子の金属軸が伸び縮みして遅れたり進んだりします。
中古ソノーラは、前の持ち主が何をやらかしているかわかりません。
修理しようとしていじり壊しているものも多々あります。
中古を購入して修理する方は、それすらも楽しむつもりで修理しましょう!


・歩度調整
手持ちに何も機材がない場合は時報の鳴り始めがきっちり一時間になっているのか、クォーツ時計やストップウォッチで測り、錘を調整します。
が、この方法だと何日かかかります。

私が行っているのは、コンデンサマイクをソノーラの背面のムーブメントがあるあたりに貼り付けて、PCの音声編集ソフトを使ってカチコチ音を3分程録音しま す。
音声編集ソフトはかなり正確にタイムベースで波形を表示してくれるので、スタート地点と3分後の波形を見て、どれだけ進んだり遅れたりしているかチェックして 錘を調節しています。
時計の歩度調整用ソフトなんてものもフリーで存在するのですが、ほとんどが腕時計用らしく、ソノーラに応用するにはまともに音を拾ってくれなかったりと問題が 多いので諦めました。


・長針と短針の外し方

長針を留めている直径1cmくらいのネジを半時計方向に回して外します。
ネジを外したら、軸の周辺をつまんで真上に引き抜きます。
長針を抜いた後、短針は真鍮の中空の軸に差してあるだけなので、真鍮の軸に爪を立てて押しながら、短針の軸周辺を上に持ち上げるように引き抜きます。
余談ですが、長針短針が歪んでお互い引っかかってしまう状態になっているものがたまにありますので、そういう時は曲げ直して修正してください。


・補修用のネジ類
ネジ類は旧JIS規格です。
現行JIS規格のものはネジピッチが異なるために途中で噛んで回らなくなり、無理に締めるとネジ山をつぶします。
真鍮製で旧JIS規格のものは入手困難なので、ニコイチで移植するか、現行JIS規格品に雄雌ともに変更する必要があります。
また、ほぼ入手が不可能な変な径のネジもあります。
リン棒ベースを固定しているネジなどは、インチネジの類で似た径のものがあるので流用が可能です。
ソノーラ背面の真鍮ナットなどは、ピカールなどの研磨剤で磨いてやると金色の輝きを取り戻します。
電池の液漏れで腐食が酷いネジ類は磨いても折れるので、素直に新品のネジに換えましょう。
真鍮のものが手に入らない場合、文房具のマジック、マッキーシリーズの黄色で塗ってごまかす手もあります。


・電池ボックス
電池ボックス内は電池の液漏れでマイナス極のバネ電極、ネジ、金属製の蓋が腐食してボロボロの場合が多いです。
バネ電極はモノタロウなどで入手可能です。
金属製の蓋は根性がある方は自作してもよいでしょう。
そして、樹脂製の電池ケース自体ですが、経年劣化でちょっと押しただけで樹脂がボロボロと崩れていくものが結構あります。
そこまで劣化したものはネジの締め直しなどすれば確実に割れます。
まだ原形を保てる場合は、100円ショップやDIYセンターで2液式のエポキシ接着剤を買ってきて、盛ったり詰めたりで多少の修復は可能です。
プラス電極になっている金属製の天板がこの樹脂の溶着で固定されているので、これも割れて剥がれる例が多くあります。
面自体に大きな割れができた場合は、樹脂に似た色の布を買ってきて、エポキシ接着剤を染み込ませて面で貼り付けます。
布の代わりに100円ショップで売っているエアコンや換気扇のフィルターとして売られている不織布でも構いません。
使い終わった使い捨てマスクの不織布でもOKです。
固まればFRPと似たような感じで強度が保てます。
剥がれた天板も、このエポキシ布で外側からケースと天板両方を覆うように貼り付けると、電池を入れたときにバネで押されても負けて再度剥がれることがありませ ん。
こういった強度の確保できる補修シートは市販のもので光硬化樹脂をしみこませたFRP補修シートが売っていますが高価なうえにねとねとしたシートなのでカット して形合わせがしづらいので使いやすい布や不織布をカットしてからエポキシ接着剤をしみこませて貼り付けた方が楽です。
このページ上部に光造形3Dプリンタ用のSTLデータを公開しました。


・振り子部ガラス板白色装飾
細かい模様のものほど、経年劣化で剥がれ落ちてボロボロになっているものが多数あります。
タバコのヤニでいぶされて汚れているガラス板も多いので、修復を試みる場合はまずは現状で写真を撮り模様を記録しましょう。
次にスマホオープナーなどの薄板状の工具をを使って、ガラス板を留めている木片をステープルごと外します。
木片と枠の間に無理やり差し込んで隙間を広げていくと外れます。
ガラス板を触らないようにして、表裏共にマジックリンを吹きかけてしばらく放置し、汚れが浮いたら、たらいや風呂に貼った水の中で揺らして汚れと洗剤を落とし ま す。
この時、もうだめな模様は剥がれて落ちます。
あまりに剥がれがひどいときは諦めて全部剥がしてしまった方がいい場合もあるでしょう。
まだ修正が可能だと思われるなら、キッチンペーパーなどで上から軽く押さえるように水分を吸い取らせガラスを乾燥させます。
模様の修正にはマッキーペイントマーカー極細か、デリーターのNEOPIKO-Lineのホワイトを使います。
どちらもペン先が0.7、0.5mmと極細の線を引くのに適しています。
剥がれ落ちてしまった部分を、このマーカーで描いていきます。
オリジナルと同じように最初から描ければそれに越したことはありませんが、多少はみ出ても歪んでも気にせず元の柄をトレースしてください。
乾きかけたら、はみ出した部分を彫刻刀の平刃の刃先で削り落として整えます。
ベースがガラスだからできる方法です。
削り残しは綿棒や爪楊枝の先でこすればきれいに落ちます。
仕上がったら、ガラスを元のようにはめて外した木片で固定して終了です。


・ムーブメント洗浄
DIYセンターで工具、カー用品コーナーにあるパーツクリーナーを使用します。
購入時に「プラスチックを侵さない」表示があるか必ず確認してください。
洗浄時には毛先極細の歯ブラシと、これまた極細の歯間ブラシがあると便利です。
分解しても元に戻せるか自信がない人は、ムーブメントを分解せずにひたすら吹きかけてはブラシでバネを変形させないように気を付けながらこする、たまに歯車を 1周くらい回してまた吹きかけるを繰り返して古い油脂を落としてください。
分解しても組みなおせる方は分解してホゾ穴まですべて洗浄してください。
パーツクリーナーで洗浄後は結露して水分がつくので、エアダスターなどで水分を吹き飛ばしてからしばらく乾燥させることをお勧めします。
また作業中は直射日光に当てないでください。
直射日光に当てると樹脂部品の劣化が一気に進みます。


・注油
ムーブメントの樹脂歯車にはシリコングリスを、他の歯車や軸にはミシン油、マシン油、エンジンオイルなどを注します。
植物由来、生分解系のオイルは経年劣化でワニス化することがあるので避けてください。
一応、セイコーの整備書ではグラファイトグリスが指定されていますが、最近製造されたオイルならシリコングリスで十分性能を満たせます。また、半世紀前の油脂 は時間が経つと変質が激しいものが多いですが、最近の技術で精製された油脂はかなり経年劣化に強く、当時のものより長持ちします。
グラファイトはグリス切れを起こしてもグラファイトが潤滑を保つことを期待してと思われますので、ソノーラを大事にしたいのであれば数年に一度注油する方が効 果的です。
5-56等石油溶剤を含む高浸透系の油脂は樹脂につけると樹脂が割れることがありますので使わないでください。
撞木(リン棒を打つハンマー)の軸と、それを駆動するカムがついている歯車は力がかかって摩耗や変形が激しいので、カムと軸部分にはモリブデングリスなどを 塗ってください。
よくわからん!けど油を注したい!っていう大雑把な人は、洗浄後シリコンスプレーでムーブメント全体が濡れるまで吹いてから、エアダスターで余分な脂を吹き飛 ばしてください。
これだけでもしないよりだいぶマシですし、ソノーラのムーブメントはシンプル頑丈なので十分動きます。
ガンギ車を押す振り子の軸上部についている小さなプレート部品ですが、これの動きが悪くてプレートが上に上がったままになると、振り子が振れてもガンギを押さ ないので時刻が進まなくなります。
これもパーツクリーナーでよく洗浄して、プレートを留めている軸の部分に粘度の低いサラサラなオイルを少量挿してください。
シリコンオイルか粘度の低いタービン油あたりを少しつけて動きを確認してプレートが上がりっぱなしにならないことを確認してください。
加減がよくわからない場合は、注油した後一瞬エアダスターで吹き飛ばせばOKです。
秒送りのカチコチ音を消したい方は、プレートの調整ネジと当たる部分に少量のグリスを付けると静かになります(音をあえて出したい方はつけなくても構いませ ん。)。
グリスを付ける場所は写真を参照にしてください。

振り子 ガンギ押し 注油
また、カチコチ音はガンギ車でも起きていますので、カチコチ音をあえて残したい方は粘度の低いオイルを、音を消したい方は、粘度の高いオイルや、プレートが浮 かない程度の柔らかいグリスをガンギ車の接触面に塗ってください。
ストッパーやガンギ車に硬すぎるグリスやオイルを使うと、気温の下がる冬場にグリスが固まって、ストッパーやガンギを押すプレートが浮いてしまい、極端な時計 の遅れが出る場合があります。
寒い地方の方は、こういう症状が出てしまうようなら、静音は諦めて柔らかいオイルやグリスを使ってください。
ガンギはムーブメントの中である意味二番目に負荷が高い部分なので、高濃度モリブデン入りのハンマーオイルなどを使ってやると摩耗が減るかもしれません。
振り子の軸の上端、振りベラが入る隙間にも注油を忘れないでください。
振り子と振りベラの接触面の動きが悪いと、振り子の重りの調節の際に振り子が上がったままになってしまい、異様な時計の進みの原因になることがあります。


・外装
ソノーラ表面の木目模様は、木目印刷した壁紙のようなものをベニヤ合板に貼ったものです。
筐体本体は木目が出る程度に薄く艶ありブラックで塗装されています。
樹脂、もしくは塗装表面用の艶出しコンパウンドで汚れが取れて艶が出る程度まで磨いてやれば十分です。
艶ありブラックの部分は磨きすぎるとすぐ地が出てしまうので磨きすぎに注意しましょう。
表面の木目模様に目立つ傷がある場合は、パーツクリーナーと綿棒などで傷全体を脱脂し、調色した塗料を面相筆で差して埋めます。
乾燥した後の強度はさして強くありませんが、色数が豊富で調色が容易なのと乾くスピード、修正時に削って簡単に修正できることから私はタミヤのエナメル塗料を 使っています。
面で大きく木目が剥がれてしまっているような場合は、いっそ剥げる部分は全部剥がして面を均し、木目の壁紙を張り直して修正するという手もあります。
ヤフオクなどで端切れの壁紙を出品している業者さんなどがいるのでそれを利用すると入手は容易です。
3Mのダイノックフィルムは大型のDIYセンターでA4大のサンプルが購入できるので、ネットで木目を見た後実物を確認するのに便利です。
ソノーラの裏板は、「ハードボード」と呼ばれる合板で、繊維板、ハードファイバーボードとも呼ばれます。
内側に網目模様が入っていて、裏面網目(S1S)という分類になります。
真空管時代のテレビや、家具調ステレオの背面など、1980年あたりまでの大型木製筐体の裏蓋としてよく使われていました。
現在でも入手しようと思えば入手できないことはないですが、品質の悪いもの、湿気を吸ったものは加工でエッジがズタボロに崩れるので、エッジをきれいに、寸法 通りに仕上げるには捨て板に挟んで加工したり、カンナややすり、エンドミルでエッジを立てるように加工したりと道具と手間がかかります。
もし、ソノーラの裏板交換に挑む場合は、失敗に備えて十分に予備のハードボードを用意して、目の細かい刃で、時間をかけて加工を試してください。


・動作確認
[電池を入れたのに振り子がすぐ止まってしまう]
電気的な問題の場合、接触不良、断線、トランジスタ不良の類です。
電池ボックスに液漏れ腐食跡があった場合は電池の触れる部分、配線を留めているネジ部分の腐食を徹底的に排除してください。
特に昭和の時代はタバコの煙が充満する環境が非常に多かったので、ヤニ汚れと腐食のダブルパンチで電池ケース端子の接触不良が目立ちます。
電池との接触面の表面の汚れを落とし、800番以上の紙やすりで磨くと不具合が解消することが多いです。
注意点として電池ケースの樹脂が劣化しているので、ちょっとしたはずみで割れたり欠けたりします。
力を込めて磨かないよう、特に天板の金属板は電池ケースを筐体から外して上から押さえながら手入れしないと溶着部分が割れて簡単に天板が剥がれます。

内部配線は腐食ではんだ付けしてある付近が断線することがよくあります。
あまりひどいようなら新しい配線に交換してしまいましょう。

トランジスタ不良は滅多に起きませんが、最低限アナログテスターかパルスメーター付きのデジタルテスターかオシロスコープがないと故障かどうか判断つかないと 思います。

物理的な問題の場合、ムーブメントのギアが噛んで、ガンギ車が回っていない場合があります。
歯車が大きくゆがんでいたり、ゴミを噛んでいると最初は良くて、しばらくすると振り子が弾かれるような動きを見せ始めて止まります。
徹底的なムーブメントの整備が必要です。
後述するカレンダー機構、時報モーターのブレーキの問題なども合わせて判断してください。

まれにですが、前所持者があちこちぶっちぎって配線がどうなっていたのかわからない、部分的にパーツそのものがない代物もあります。
中古ソノーラを買うときは裏表よく確認しましょう。


[時報が鳴りやまない、本来鳴らすべき時報と数が合わない]
撞木を打ち鳴らす数を数える数取り車(大きなギザギザのついた歯車)にテンションをかけているコイル状のバネ、もしくは数取りピンにテンションをかけているバ ネの根元の固定が外れています。
これらの症状の特徴として、ソノーラが正常であれば長針が時報のなる12を指す3分ほど前に、数取り車をセットする「カチャッ!」という音が鳴るのですが、こ の音がしなくなります。
原因として、
・数取り車についている数取りピンの動きが古くて固まってしまった油脂で動きが疎外されて止まらなくなり、コイルバネを巻き切ってもまだ鳴らしている と、コイ ルバネの末端を固定している部分が伸びて変形して外れてしまう。
・何かのはずみで数取りピンにテンションをかけているバネが外れる。(数取りピンが曲がると外れやすくなります。)
数取りピンがうまく動くように、パーツクリーナーでよく洗浄して、注油して、変形してしまったバネの末端を曲げて固定しなおします。
曲げ直してつけたバネは外れやすいのでうまく動作するのが確認出来たら接着剤などで固定してしまった方が確実です。
数取り車をいじった場合は最初このコイルバネを巻いてテンションをかけてやる必要があります。
数取り車を1ノッチずつ回して、数取りピンでロックがかかったら、数取り車を回らないように抑えながら時報の接点を押してロックを外し、最終的に2~3回転ほ ど巻いてテンションをかけます。
このテンションが足りないと、5時なのに8回時報が鳴ったりと、時間と時報を打つ数が一致しません。


[1時、2時の時に12回時報が鳴る]

数取り車のコイルバネのテンションが足りないか、数取りピンが曲がって斜めになっています。
数取り車のコイルバネのテンションが足りないと、正常な位置まで巻き戻しができずに12回時報を鳴らしてしまう現象が良く起きます。
また、ソノーラのムーブメントで、中期以降白いナイロンの樹脂歯車が使われるようになったムーブメントは、数取りピンがアームプレートに固定されている機構に 変更されています。
この数取りピンは、長針が時報を鳴らす3分くらい前にカチッと音を立てるときに、勢いよく巻き戻されて金属製の位置定めピンに当たるために、長年使っていると 根元から曲がって正常な動作をしなくなります。
数取り車の歯車に対して垂直にピンが立っていない場合は、曲げ直して修正してやります。
過去に曲げ直して修理している場合や、すでにむごく金属疲労を起こしている場合は、ぽきっと折れてしまうことがあります。
長持ちはしませんが、ハンダでつけ直すことは可能です。

余談ですが上の写真(初期型の歯車ほぼすべてが金属のモデル)の数取り車に穴が一つ空いているのが見えると思いますが、ムーブメントをばらして組み立てる際 に、時報接点のついたアームの突起が、この穴に誤ってすっぽりはまったまま組み立ててしまうことがよくあります。
時報接点周りは、ムーブメントの天板をはめる際にあっちがはまればこっちが外れ、でかなり忍耐力を食われる部分で、この穴はまりに気づかず組んでしまうことが ままあります。
ムーブメントを本体に取り付ける前にムーブメントの動作をざっと確認してみて、ガチっと噛んで動かない場合は大抵このミスですので、また天板組み直しか、と絶 望感に襲われながら更なる忍耐力を試されることになりますので、組み立ての際は注意しましょう。


[時計を進める方向に調整したのに遅れるようになった、もしくはその逆 振り子をいじるたびに遅れたり進んだりする]
前提条件として、ソノーラ本体が扉を開けても動かないよう、前後左右がしっかり固定されてソノーラ本体の傾きが変化しない状態で歩度調整を行っていることを確 認してください。
床置きや、ソノーラ上部の金具をどこかに引っ掛けただけで本体を指で押したらぶらぶら動く、なんて状態で歩度調整をしても、絶対安定しません。

そのうえで調整して歩度調整がうまくいかないのであれば、ほぼ振りベラ部分の問題です。
振り子上端の振りベラと振り子を接続している部分の動きが悪くて振り子をいじるたびに振り子の全長が変わっている場合があります。
振り子上端の振りベラが入るスリット部分は内部までよく洗浄してから注油し、振りベラを差し込んだ時にするする動いて、かつ隙間が無いよう隙間を調整します。
振りベラが引っかかったり動きが渋いようだと、振り子をいじるたびに振り子の全長が微妙に変わって精度に大きく影響します。
また、振りベラの中央の2本の薄い金属板でできたバネ部分に異常がないか確認してください。


取り出した振りベラが曲がっている、金属板でできたバネ部分に折り癖がついている、大きな錆がある場合は、その振りベラは死んでいます。
正常なものに交換しない限り、どんなに錘を調整しても遅れたり進んだりまともに時を刻みません。
輸送時に振り子の固定をしていなかった、振り子を外すときに捻じり過ぎて壊す、また、大きな地震や落下の衝撃で破損する例が多いようです。
写真の振りベラは、わかりにくいかと思いますが、たったこれだけの微妙な錆びや折れ跡で、ソノーラはまともに1秒を刻んでくれません。
先に述べたとおり、ヤフオクで2022年現在、2000円程度でまだ新品が購入できますが、ヤフオクに出品している方は、閉店した時計店から在庫を引き取って 売っているだけの処分業者が多いので、
取り扱いを誤って送られてきた振りベラが曲がって破損しているなんてこともよくあります。
歴史のある時計店に倉庫奥に在庫が眠っていないか問い合わせをして、まともなものを手配した方が確実かもしれません。

一応、ムーブメント内部の歯車の歯が歪んでいる、軸が曲がっているなどでも歩度がばらつくことはありますが、それが原因の場合、ニコイチ修理でまともな部品を 調達するかムーブメントごと入れ替えるか以外現状修理方法がありません。
特にソノーラの場合、ムーブメント内部で多少抵抗が変わったくらいだと歩度に影響が出ないことがほとんどで、歯車が噛みついて動かないレベルでない限り目に見 えて影響が出ることはありません。
このページの上の方に、ちょっとだけ振りベラの再生方法について書いてあります。
が、ダイヤモンドカッターか金属板用の押切が最低限必要で組み立ても結構面倒なので純正部品を入手した方がよろしいかと。


[最初は動いていたのにいつの間にか止まっている]
パターン的に2つあります。
使っているモデルにカレンダー機能がついている場合、カレンダー機構の動きが渋いとムーブメントの動きまで阻害されて振り子が止まる場合があります。
カレンダー機構を外して正常に動くようになった場合は、カレンダー機構の油がワニス化して動作を阻害している場合が多く見られます。
カレンダー機構の分解メンテですが、製造時期によっては表面の印刷が劣化して剥がれやすくなっている場合がありますので、取り扱いには十分注意してください。
また、注油は軸部分にだけ行い、機構のアームプレートの隙間などに油を染み込ませないよう注意してください。
表面張力によって貼りついたアームが動きが悪くなりメンテ後かえって悪化する場合があります。
余談ですが、カレンダーが切り替わるのは初期設定ではAM1時頃だそうで。
0時ではないんですね、実は。


時報接点のモーターブレーキ側の隙間が広すぎて、時報が鳴り終わった後モーターが回りすぎてカムが引っかかる位置で止まってしまうと、ムーブメントの歯車が回 らなくなり結果的に時計全体が止まることがあります。
時報の接点は指で押すと動いて、接触すると撞木駆動のモーターが回りだすアームの接点が2本と、ムーブメントのベースプレートに六角ナットで締めて固定され ている真鍮プレートでできたモーターブレーキ接点(写真青い配線がつながっている奴)があります。
このモーターブレーキ接点の真鍮プレートは最初からついていないモデルもあります。
製造年代によって、時報の撞木を駆動するモーターは使われているものが違うのですが、電池一本で駆動するにはモーターの径を大きくせざるを得ず、径が大きくて 慣性力が強いものはブレーキをかけないと電流を遮断しても回りすぎてしまっていたと推測します。
モーターブレーキ接点がついていないモデルはここから先の調整をする必要はありません。
ムーブメントを組み直した際に、このモーターブレーキ接点の隙間が広すぎると問題が発生する場合があります。
最後の時報が鳴り終わるとモーター駆動の接点接触から解放され、逆にあるモーターブレーキ側の接点に接触するのですが、これが遅れるとモーターの惰性で回って はいけないところまで歯車が回ってカムが引っかかります。
接点がモーターを駆動する側に接触しているときは、ブレーキ側との間に隙間があり、鳴り終わったら駆動側との間には隙間があるがブレーキ側接点とは接触してい る状態になるようブレーキ接点である真鍮プレートを止めている六角ネジを緩めてモーターブレーキ接点の隙間を調整します。
時報が鳴っている最中はブレーキ側との隙間が大体0.5mmくらいになるよう調整します。


[時報が鳴らない&時報用の電池が熱くなる]
時報用電気接点のモーターブレーキ接点根元の透明樹脂ワッシャーにうまくモーターブレーキ接点がはまっていないか、透明樹脂ワッシャーが割れたか、以前修理し た人間が誤って付け忘れたかして電池がショートしています。
経年劣化で外そうと爪先で触れたら割れてしまったという方も多いのではないでしょうか。
ムーブメント全体は電池のマイナス極(黄色い配線)に接続されています。
モーターブレーキ接点の真鍮板は電池のプラス極(青い配線)に接続されています。
この二つは透明樹脂ワッシャーで絶縁されていないと電池のプラスとマイナスを直結したショート状態になります。
透明樹脂ワッシャーは表と裏があり、外周の径が違う2段構造になっていて、径が大きい方をムーブメントのベースプレート側にして取り付けねばなりません。
これを逆にしてショートさせてしまっている失敗修理品をよく見かけます。

取り付け順ですが左の六角ナット部は上から[六角ナット]-[メガネ状ベーク部品]-[樹脂ワッシャー]、右は[六角ナット]-[メガネ状ベーク部品]- [モーターブレーキ接点]-[樹脂ワッシャー]の順で、樹脂ワッシャーの小径部分を上に向け、その小径部分にモーターブレーキ接点がはまるようになっていま す。 透明樹脂ワッシャーをベースの支柱にはめたら、モーターブレーキ接点を支柱に通すと透明樹脂ワッシャーの径の小さい方にすっぽりはまります。

透明樹脂ワッシャーが割れてしまった、元からついていない、と言う場合は、何とかしてモーターブレーキ接点のショートしてはいけない部分を絶縁しなくてはなり ません。
ちょうどいい外径、内径の樹脂のチューブがあれば薄くスライスして支柱とモーターブレーキ接点の穴の間に入れ、樹脂ワッシャーを敷けば同等の効果は得られま す。
無事なワッシャーが1枚でもあるなら複製する方法もありますのでページ上部に載せておきます。


[振り子がコイルに当たる]
振りベラが正常で時計本体の取り付けを見直して傾きを調整しても振り子が平行に振れずにコイルに当たる場合は、振りベラの取り付け軸が曲がっているか、振り子 下端の湾曲磁石棒を軸に取り付けている部分がずれている場合です。
振りベラの取り付け軸が曲がっているなんて言うのは、高所から落下して相当な衝撃を受けでもしない限り起こりえないので、そんなことになっていたらムーブメン トの動作も怪しくなります。
振り子下端の取り付け部分がずれた場合は、軸を締め付けている2本のネジを緩めて平行を出して締め直すことで修正が可能ですが、軸のネジで締められている部分 が変形してしまっているためにうまく調整しきらないことも多いようです。
軸を取り外してネジの締め付けで変形してしまった箇所を均してやると調整が効くようになりますが、平行を出して、振り子の長さも調整して、で結構な手間になり ます。
平行の出し方は、私はちょうど振り子の振りベラが入る隙間ぴったりの幅のスコヤを持っていたので、スコヤを平面に立てて寝かせた振り子の軸に建てたスコヤの定 規部分を差し込むことでまず軸の平行が出せます。
次に、8mmくらいで同じ厚さの真鍮板があったので、それを振り子下の湾曲磁石棒の下に左右に敷くことで磁石棒の平行が出せます。
この状態で緩めておいた軸を固定するネジを締めれば、振りベラの振れる方向と同じベクトルで磁石棒が振れるので、コイルに変に当たることは無くなります。

振り子 水平出し A
振り子 水平出し B

このページに掲載の制作物は配布しようと思えばいくらでも配布できるのですが、ヤ フオクなどを見る にアンティークで新品と言いながら中古品を出すような悪質なアンティーク高額出品者が目につきます。
特に銘板シールなどは新品に見せかけるのにうってつけと思われ、こういった連中に悪用されるのは腹立たしいので誰でも入手できるようにはしま せん。
SEIKOさんの著作権の問題もあります。
あくまで趣味の範囲で自宅で使うソノーラを、どうしても復活させたい一台がある、少しでもきれいにしてやりたい、そういう情熱のある方は掲示 板にその旨書き込んでください。
同好の士としてならお手伝いはしたいと思います。
完璧な修理を望むなら、こういう古時計修理専門店がありますのでちゃんとお金をかけて修理してやってください。

もどりゅ


滅多に見ませんが、何か連絡があるなら下記に書き込むと返事をすることがあるかもしれません。
あまり期待しないでください。
BBS

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