MITS基板加工機



3軸加工機が数万円で買えるようになり、さらに追い打ちをかけるように安い基板屋 さんが出てきてしまったのですっかり影が薄くなってしまいましたが、とにかく試作基板のパターンを修正したらすぐ作り直してテスト、なんてい う鬼納期の 開発現場ではめちゃくちゃ役に立つのがこの基板加工機。
FP-7Aというもう20年も前の機種のノウハウですがちょろっと紹介していきます。

・ベース板
ベーク板を適当な大きさにカットしてネジ穴を開ければ、代用が効きますので高価な純正品を買う必要はありません。
が、安い海外輸入品は厚さが均一ではないことがあるので国内生産品を選んで買いましょう。
基本的に基板作るたびに、ドリル加工でボコボコになっていくので、生基板をセットする前に大型カッターの刃かスクレーパーで、開いた穴の 表面を攫って穴のエッヂに 立ったバ リを取って生基板の平坦度が不安定になるのを防止します。
X軸方向に穴が重複するとベース板の交換頻度が高まるので、加工位置を毎回ずらしてベース板板面全体を均等に使うようにします。
ミリングカッターで彫った線の幅が安定しなくなるほど凸凹になったら、ベース板を外して180度の回転させ奥の方の使われないエリアと手前を入れ替えるか、ベース 板自体を新品に交換します。
ベース板を交換した際は、手動操作で加工機のXYの上下左右限界点でベース板に適当な溝を掘り、どこまで加工可能なのか把握できるようにします。
また、手前のY軸限界線ぴったりに金定規を貼り付けておくと、両面基板加工時に基準点が大きくずれずに済みます。


・生基板の修正

生 基板表面に爪が引っかかるレベルのサビが出ている場合は、台所用の研磨剤付きのスポンジで爪が引っかからなくなる程度まで磨いて錆を落とします。
また、生基板は、エッヂの部分にバリが出ているとベース板と接する部分のバリで基板が浮くので、大型カッターの刃かスクレーパーでエッヂの面取りをします。
両面加工する場合は、表裏両面のエッヂのバリ取りを行います。







次に、基板の反りを修正します。
私は金定規にエッヂを当てて、反りの具合を見て4辺ざっくり修正し、ベース板に載せてみて真ん中が極端に浮いたり逆に四隅が 浮いたりしていないか裏表確認して 反りを修正します。
バリと反りは、加工する線幅が狭いほど悪影響が出やすくなります。


・生基板のベース板への貼り付け
ベース板に大きな異常がないか、指先などで表面を撫でて確 認してから、エアダスターで噴いて吹き飛ばせるゴミは吹き飛ばし、生基板をベース板の比較的使われて いないところに設置します。
ベース板の穴開け跡にバリが出ている場合は大型カッターの刃かスクレーパーでベース板表面のバリ取りをします。
X軸は加工範囲の限界点から最低2cm隙間を開けて基板を設置します。
ベース板にあらかじめ金定規を貼り付けてある場合は、それに基板のエッジをぴったりくっつけて設置します。
固定には塗装用の紙マスキングテープを使います。
生基板側には2mm程度の幅があれば接着力は十分です。
生基板の4辺をすべてテープで固定します。


・スピンドルへの加工刃の取り付け
スピンドルのチャックに加工用の刃を差し込む際は、必ず刃の軸をキムワイプなどのケバの出ない使い捨てワイパーで拭い、ほこりなどをチャック部分に噛みこまな いようにします。
外形加工を行った後などは粉塵がチャック付近にまとわりついているので、ルータービットを外す前にエアダスターで埃を吹き飛ばし、外した後にチャック穴内部も 噴いて埃を除去します。
チャック部分に何かを噛みこんでしまうと刃先がぶれて折れやすくなり、スピンドルモーターのベアリング寿命にまで影響します。


・ドリルの高さ調整
ドリル刃の高さ調整を行います。
スピンドルを降ろした状態で、ミリングカッターの刃が基板表面に接触してからさらに0.5mm食い込む=接触ピンが0.5mm浮く状態に調整するか、ドリル刃 を付けて刃が生基板の外周から出るようにして、スピンドルが降りた状態でベース板に刃先が十分食い込む高さに接触ピンの高さを調整します。


・ドリル加工後の穴のバリ取り
ド リル加工が終わったら、大型カッターの刃かスクレーパーで開けた穴のバリ取りをします。
このバリが残っていると、パターン加工で溝幅が安定しません。








・輪郭加工の溝幅決定
手動操作画面の移動量を1mmにセット、 輪郭加工に使用するミリングカッタを装着し、刃先を降ろした際に刃先が基板銅箔に触れない高さぎりぎりに合わせます。
原点に刃先を移動させ、手動操作でスピンドルを回転させ刃先を降ろします。
刃先が基板銅箔に食い込んでから10~15ノッチ、輪郭加工で彫りたい溝幅よりも若干太くなる程度の深さに刃先を設定します。
その状態から1mm移動させて溝を彫っては2ノッチ刃先を上げるを数度繰り返して、左の写真のような溝幅の違うサンプルを彫ります。
彫りたい溝よりも溝幅が細いかな?くらいになったら刃先を上げてスピンドルを止め、スケールルーペで溝幅を確認して何ノッチ戻せば理想の溝幅になるか確認して 溝幅を決定します。

・ハッチング加工
ハッチング加工は、Flash for Windowsでハッチング加工を指定していった順に行われるので、Flash for Windowsでハッチング加工を指定する際は表側は左側から右側に、裏側は右側から左 側に指定していくと、広いハッチング加工を行った際に、自分で削ったハッチング加工に接触ピンが落ちてハッチングが必要以上に深くなるのを軽減することができ ます。
広いハッチングにはところどころ島を残しておくと、両面基板加工の場合は裏面加工が不安定になるのを軽減することができます。


・表裏反転
表面の加工が終わり、基板を裏面にするときは、基 板を外した後に、ベース板の穴あけ跡を大型カッターの刃かスクレーパーでバリ取りし、手で触って確認後、エア ダスターで掃除です。
ミリングカッターの刃が終わりかけていて加工後にバリが出ている場合は、加工した基板の表面もパターンを削らないよう慎重にバリ取りします。
表裏をひっくり返してベース板に基板を固定したら、ミリングカッターを取り付け、基準穴1に刃先の中心を正確に合わせます。
移動距離を1mmくらいにして、刃先が軽く基板に触れる程度に深さを調節し、基準穴周辺に十字星のように1mm間隔程度で点穴を穿つと、基準穴とのずれが分か りやすくなり0.1mm以内にずれを調整 することができます。
基準穴1が決まったら、基準穴2で同じように十字穴を穿って正確に補正をかけると、パターンとスルーホールが大きくずれることは無くなります。





・外径加工の刃の節約
外径加工時の基板に残す厚さを、新品の刃の時は0.12mm、切れなくなったら0.10mm、また切れなくなったら0.08mmと0.02mm刻み(2ノッ チ)ずつ減らしていくと同じ刃を比較的長く使うことができます。
ただし、あまり使い込みすぎると加工中に刃が折れたり基板が押されてメキメキと固定しているマスキングテープごと剥がれるなんてことも起こります。
ベーク基板では切粉が焦げ始めて変色してきたら同じ刃を使うのはやめましょう。
CEM-3、FR-4基板では切粉自体が耐熱性が高く変色し始めたころにはもうギリギリなので変色し始めたらその場でスピンドルを上げて刃を交換し再加工した ほうが無難です。


・切粉の散乱防止
ド リル加工時に遠心力で飛ばされて掃除機に吸い込まれな かった切粉が結構周辺に飛び散ります。
台所の三角コーナー用の細かい網を適当な大きさに切って刃の周りを覆うようにマジックテープなどで簡単に着脱できるようにしておくとだいぶ散乱 を軽減できます。
コツは基板に隙間なくぴったりと網の端を付けるように設置することです。







・掃除機
粉塵、切粉吸引用の掃除機は家庭用の紙パック掃除機がお勧めです。
サイクロンは、微細粉塵でフィルターがすぐ詰まってしまう上に、使い込んだフィルターは微細粉塵をスルーしてしまうので、作業中粉をまき散らしまくる羽目にな ります。


・交換刃
この基板加工機のスピンドルに使えるビットは一般の超硬ビットよりも全長が短く、市場に出回っている再研磨ルータービットでは長すぎて使えません。
私はe-toolsさんから購入しています。
本数がたまらないと受け付けてもらえないところが結構ありますが、輪郭加工に使うミリングカッタと穴あけ加工用のドリル刃は再研磨業者で刃先を再生してもらう ことができます。


・注油
数か月に1度くらいの割合で、XY軸のガイドバーとボールネジ部分をキムワイプなどで拭いて古い油と埃を落とし、モリブデン含有の機械油を注油します。
油ではなくグリスでもOKですが、粘度が高すぎると基板加工機の電源投入直後の原点復帰動作で駆動モーターがトルク負けして動かず異音を上げ動作不良を起こす ことがあります。
生分解性の油や植物油、ポリマーを大量に含むエンジンオイルなどは避けてください。
化学変化でワニス化して接着剤のようになり動作不良を起こす原因になります。


・裏話
スピンドルモーターは、ホビールーターMr.MeisterシリーズのOEM元、日本精密機械工作株式会社が製造しているルーターのカスタム品なのですが、過 去に直接日本精密にオーバーホールをお願いしたらMITSのカスタムOEMだからちょっと連絡を取って…今回だけですよ?でベアリングまわり一式交換しても らったことがあります。
スピンドルを新品でMITSから買うと8万くらいして、ヘビーに使うと結構すぐガタが来るので、半額くらいで済むオーバーホールくらいは許してもらいたいもの ですが、MITS自体は交換前提でオーバーホールは請け負っていないとのことでした。

このFPシリーズを設計された方がもう高齢と言うことでずいぶん前に引退されたそうで、後継機のY軸移動型ElevenLabシリーズに大きく形式が変わった のはそのせいかもしれません。



もどりゅ


滅多に見ませんが、何か連絡があるなら下記に書き込むと返事をすることがあるかもしれません。
あまり期待しないでください。
BBS

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